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第1回動詞1練習問題
第1回動詞1練習問題解答


第1回 動詞T


今日は、動詞の活用について勉強しましょう。
古文学習の基本中の基本です。
説明をよく読んでから、練習問題を解いてみましょう。


@ 動詞・形容詞・形容動詞を三つまとめて「用言」といいます。動詞は用言の一種で、動作・作用を表します。終止形が「う」「く」「す」「つ」「ぬ」のようなウ段音で終わる(ラ変動詞を除く)のが動詞の特徴です。

A 動詞は活用します。つまり下にどんな語が付くかなどによって語形が規則的に変化します。例えば、「死ぬ」という動詞は、

   死な・死に・死ぬ・死ぬる・死ぬれ・死ね

と活用します。そして上の活用形のそれぞれを、左から順に「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「已然形」「命令形」と呼んでいます。

B 各活用形の用法はつぎのとおりです。
*「死ぬ」は各活用形が全部違う形で、説明に便利なので使います。助動詞の接続を覚えるときに利用すると便利です。
*「下接する」は、「下に付ける」「下に付く」ということです。
*「○○形接続の」は、「○○形の下につく」ということです。


 未然形の用法

、未然形接続の助動詞(ず、る、らる、す、さす、しむ、む、むず、じ、まし、まほし)を下接します。
   死な
ず。
   死なる。
   死なす。
   死なしむ。
   死なむ。
   死なむず。
   死なじ。
   死なまし。
   死なまほし。
というときの「死な」は、みんな未然形です。下にくっついている助動詞が活用していても同じことです。

、未然形接続の助詞(で、ば〔以上二語接続助詞〕、なむ〔終助詞〕)を下接します。
   死なで、
   死なば、
   死ななむ
というときの「死な」も未然形です。 

連用形の主な用法

、下の用言に係る。
   死に急ぐ
   死に給ふ
   死にがたし
のように下の用言(ここでは「急ぐ」「給ふ」「がたし」)に係る「死に」は連用形です。
   死にもこそすれ
のように、連用形と用言の間に係助詞や副助詞が割り込むこともあります。 

、文を中止する(途中でいったん止める)働きがあります。連用中止法といいます。
   虫は死に、草は枯る。
というときの「死に」は文を中止するために使われている連用形です。

、連用形接続の助動詞(き、けり、つ、ぬ、たり〔完了〕、たし、けむ)を下接します。
   死にき。  
   死にけり。
   死につ。
   死に
たり。
   死にたし。
   死にけむ。  
というときの「死に」は連用形

、連用形接続の助詞(て、つつ、ながら〔以上接続助詞〕、てしが、てしがな、にしが、にしがな〔以上 終助詞〕)を下接します。
   死にて、
   死につつ、
   死にながら、
   死にてしが。
   死にてしがな。
   死に
にしが。
   死ににしがな。
 というときの「死に」は連用形です。

終止形の主な用法

、普通に文を終止するときに使います。
   病をわづらひて死ぬ

、終止形接続の助動詞(らむ、べし、まじ、めり、らし、なり〔伝聞・推定〕)を下接します。 
   死ぬらむ。
   死ぬべし。
   死ぬまじ。
   死ぬめり。
   死ぬ
らし。
   死ぬ
なり。
というときの「死ぬ」は終止形です。ただし、ここにあげた助動詞は、ラ変型の活用語にはその連体形に付くので注意してください。

、終止形接続の助詞(と、とも〔以上二語接続助詞〕、な〔終助詞・禁止〕)を下接します。
   死ぬとも、
   死ぬな。
というときの「死ぬ」も終止形です。

連体形の主な用法

、下の体言(名詞)に係って連体修飾語になります。
   飢ゑて死ぬるもあり。 
 のような例を思い浮かべてください。

、連体形だけで名詞相当の意味を表します。
   飢ゑて死ぬるあり。
のような例です。「死ぬる」という連体形だけで、「死ぬこと」「死ぬとき」「死ぬ人」といった名詞相当の意味を表します。この連体形は、断定の助動詞「なり」、比況の助動詞「ごとし」、そして格助詞を下接することができます。

、係助詞「」「なむ」「」「」「やは」「かは」の“結び”になります。「係り結びの法則」です。次の例文をよく見てくださ い。
   多くの人飢ゑて死ぬる。(強調文)
   多くの人なむ飢ゑて死ぬる。(強調文)
   多くの人飢ゑて死ぬる。(疑問文、または反語文)
   誰
(たれ)飢ゑて死ぬる。(疑問文、または反語文)
   多くの人やは飢ゑて死ぬる。(反語文、または疑問文)
   誰かは飢ゑて死ぬる。(反語文、または疑問文)

、「係り結び」とは関係なく、文末を連体形で止めて、余韻・余情を表します。
   人の多く死ぬる。(人が多く死ぬことよ。)

、連体形接続の助詞(か、かな、かも、は〔以上終助詞〕、が、に、ものから、ものを、ものゆゑ、ものを、を〔以上接続助 詞〕)を下接します。
   死ぬるか。
   死ぬるかな
   死ぬる
かも。
   死ぬるは。
   死ぬるが、
   死ぬるに、
   死ぬるものから、
   死ぬる
ものゆゑ、
   死ぬる
ものを、
   死ぬる
を、

已然形の用法

、係助詞「こそ」の“結び”になります。これも「係り結びの法則」です。
   多くの人こそ飢ゑて死ぬれ。(強調文)

、已然形接続の助動詞(り)を下接します。ただし、これは四段動詞の已然形に限られます

、已然形接続の助詞(ば、ど、ども〔以上接続助詞〕)を下接します。
   死ぬれば、
   死ぬれど、
   死ぬれども、
というときの「死ぬれ」は已然形です。

命令形の用法

、命令口調で文を止めるときに使います。

、「〜てもかまわない」「〜てもよい」の気持ちで、文を中止するときに使います。これを「放任法」といいます。
  (例) いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ目さむる心地すれ。(徒然草) 
  訳) どこであってもかまわない、しばらくでも旅に出ているのは目が覚めるような(新鮮な)気がする。
この「あれ」は、ラ変動詞「あり」の命令形で、「放任法」の例です。



C 語幹とは、動詞が活用するとき実際には変化しない部分のことをいいます。たとえば動詞「死ぬ」は、な(未然形)に(連用形)ぬ(終止形)ぬる(連体形)ぬれ(已然形)ね(命令形)と活用しますが、「」の部分は変化していません。この「」の部分が語幹です。

D 語尾(活用語尾)とは、動詞が活用するとき実際に変化する部分のことです。語尾(活用語尾)をさらに分類して未然形語尾、連用形語尾、終止形語尾、連体形語尾、已然形語尾、命令形語尾といいます。例えば動詞「死ぬ」は、死(未然形)死(連用形)死(終止形)死ぬる(連体形)死ぬれ(已然形)死(命令形)と活用し、「」が未然形語尾、「」が連用形語尾、「」が終止形語尾、「ぬる」が連体形語尾、「ぬれ」が已然形語尾、「」が命令形語尾ということになります。

*かな一字で書き表せるような活用形を持つ動詞は、語幹・語尾が分けられないものとし、活用表では、通常「語幹」の欄に○を入れて示します。たとえば、
   月をて、
というときの「み」は、「て」の上ですから連用形です。でもひらがな一字なので語幹と語尾に分けられないのです。

E 活用表は、@からDで述べた動詞の活用を表にまとめたものです。例えば、動詞「死ぬ」は以下の活用表にまとめることができます。

語幹

活      用      語      尾

未然形

連用形

終止形

連体形

已然形

命令形

ぬる

ぬれ



ずいいぶん長くなってしまいましたが、今日の範囲の説明はこれで終わりです。「死ぬ」だらけでごめんなさい。なにか一つでも「そういうことだったのか」と納得してもらえるところがあったら、こちらも嬉しいです。

 

さあ、練習問題で実力アップ。

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